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プリズナー

「異動のたびにすべてを置いて来るんだ。捨てなきゃならない。前だけを見る。友達も、ガールフレンドも、なじみのレストランも、何もかも」
何をするにも自由で、申し分のない待遇を受けて、不満のタネなんて見つけられそうも無い生活をしている彼が。とても苦しい懺悔をしているように見える。
友達や人間関係は距離がその質を変えるかもしれないけれど、失うことは無いと思うのだけど。いくつになってもすっきり生活がリセットできるのは素晴らしいと思うのだけど。
私はいつも「今」と「ここ」にあるすべてを捨てたいと思いながら捨てることができないで悶々としている。なぜ捨てられないんだろう?
彼は捨てる力を享受しながらそれを悔やんでいる。何故だろう?
彼から渡された某国のパスポートの束をなんとなく開いてみた。一番古いのには、ティーンエイジの頃の頼りなげな笑顔の写真が張ってあった。そして2冊目。3冊目ともなると、もうすっかり今の顔の写真。彼は某国にいつか戻れるのか、戻りたいのか。某国とは違う国の国籍を持っている彼の心のうちは計り知れない重い秘密が詰まっている。
everyone is in his own prison.